30代半ばを過ぎ、5歳の娘がいる会社員です。
今、私は 「このコロナ禍に1円も減額されずお給料をもらえていることに感謝して、全くワクワクできない今の仕事を、この先も続けていくべきか」 ということを悩んでいます。
昨年、転職したい!!と思いたち、転職サイトに登録したものの、やりたいことが整理しきれず、 思い悩んでいるときに、コロナ禍に差し掛かり、この疑問と葛藤しています。 自分一人の生活なら、立ち止まらずに動き出せると思うのですが、家族がいて、娘がいて、今の安定した生活を手放す勇気は持てず、かといってこの先も今の仕事を続けていくと割りきれない自分がいます。
起きている時間の大半を仕事に費やしている以上、楽しい時間にしたいと思っています。 それなのに、今の会社では私が私らしくいられない、と感じているのです。 一緒に働きたい! こんな人みたいに仕事をしたい!と思える人がいない。
どんな仕事にでも興味を持てるほうではありますが、どちらかというと一緒に働く周りの人のことや、周囲に役立っているか、といったことに重点をおいて考えてしまうタイプです。 でも、今の会社がまったくその考えとは合っていないのです。
◆物質的報酬と精神的報酬、どちらを優先させるか?
まずは、FA子さま、回答が遅くなってしまってごめんなさい。ずっと考えてはいたのですが。。もう、ご自分なりの結論をお出しになっているでしょうか。だったら、よいのですが。
安定と好きなこと。収入とやりがい──物質的報酬と精神的報酬、この二つに、どう折り合いを付けるか。職業選択のときから、あるいは、(おもにこれまでの)女性にとっては配偶者選びのときから、常にわたしたちにつきまとってきた課題ですね。
そりゃあ、両方得られるのがいちばんで、大きな有名な会社に勤めるキラキラサラリーマン(ウーマン)のように、両方を手にしている「勝者」(?)に見える人もいますが、内側に回ってみると、案外そうでもなかったりする。
まあ、お金をもらうということ、働くということはこういうことと割り切って、つまり、考え方次第でどうにでもなりそうな精神的報酬は二の次に、目にも明らかな物質的報酬を優先させて生きていく。そうしているうちに、責任の範囲も広がって、仕事のやりがいも生まれてきて、嫌な上司もいなくなって、気がつけば自分がそれになっていて、と。
で、定年後、これでよかったんだ、と思えるんなら問題ない。問題あるのは、わたしの(ぼくの)人生、何だったんだろう、と感じてしまうことですね。将来、そう感じてしまうことに対する、今、そこにある恐れ、不安ですね。
これは、あまりに普遍的かつ個別的すぎて、ごめんなさい、客観的状況がわからないと、なんとお答えしていいか、正直わかりません。やはり、ご自分で考えていただくしかありません。
でも、考えるツールをご紹介することはできます。
ビジネスでは普通に使われている「問題解決」の技法を使うのです。
◆問題の本質を知る
問題解決の技法なんていうと、難しく聞こえますが、そこで重要なのは、
そもそも何が問題なのか?
を明確にすることです。つまり、本質的な問題を知ることです。これを「問題を定義する」と言います。これがわかってしまえば、問題の半分、いや、ほとんどが解決したようなものだと言われます。そりゃそうですよね。それに対して、具体的な手を打てばいいわけですから。
問題を定義するには、
①現状を把握し、
②具体的な問題を抽出し、
③それを構造化します。
④そして、問題の本質を見つけます。
では、FA子さんの、「今の会社が自分の仕事観と合わない」、という状況を生み出している本質的な問題は何か?
一般に、会社を評価するときの軸は、次の5つに分類できるのではないでしょうか?
①会社のミッションに共鳴できるか?
②自分の能力を生かせる職種、制度があるか?
③給料や待遇がいいか?
④知名度や権威、ブランドイメージなど、人に自慢できる会社か?
⑤社風、社員の雰囲気が自分に合っているか?
このなかで、何を重視するか? は、人によって異なり、それこそ、その人の仕事観、人生観の反映となります。
つまり、
問題とは、その人が、理想としている状態と現状とのギャップだからです。
理想とする状態は、人によって異なるので、同じ状況でも、それを問題として悩む人とそうでない人がいるわけです。
ですから、この自分が理想といている状態、すなわち、自分は、何を求めているのか? をはっきりさせない限り、問題の本質もはっきりせず、したがって、効果的な解決方法が見つからない。
それだけではありません。たとえ、ここで、たとえば転職に成功したとしても、近い将来、また同じ問題にぶち当たるかも知れません。
大事なのは、自分が求めているものを知ることです。
ただ、そんなに深刻に大上段に考える必要はありません。だって、それは、変化するものだから。
たとえば、新卒の時の自分を思い出すと、当時のわたしは、②だけで選んでいたと思います。つまり、憧れの女性誌の編集職と、心理学部卒を生かした国家公務員。二つに共通するのは、どちらも自分が得意そうだな、という直感と、それより何より四大卒女子に、男子と同じ門戸を開いていることでした。それだけでも当時は貴重でした。
そもそも、ミッションなんて言葉は出回っていなかったし、社風や社員の雰囲気なんて、入ってみなきゃわかんなかった。外資系もなかったので、どこも、給料や待遇は選択基準とするほどの違いはなかった。
まあ、わたしのことは、ともかく、FA子さんは、最初、今の会社を選んだ理由はなんですか?
本当の理由は?
◆自分が本当に欲しいもの(理想)と正直に向き合う
本当の理由は、採用の面接官がイケメンだったから、かもしれないし、制服が(あれば、の話ですが)かわいかったからかもしれないし、競争率の高い人気の企業だったので、受かったら自慢できる、という理由だったからかもしれない。そんなものです。それを否定しないで、自分の心に聞いてみることです。
必要なのは、深刻さではなくて、正直さです。
正直になってみて出てきた、その理由が、あなたが会社、あるいは、仕事に対して求めるものです。
あるいは、毎日の日常とその積み重ねである人生に求めるものと言ってもいいでしょう。
ところが、会社も変わるし、あなたも変わる。夫婦みたいなもんです。知らないうちに相性が悪くなっているのはよくあることです。
それが、今、転職を考えるようになったのは、思っていたのと違っていたからですか? それとも変わってきてしまったからですか?
それはどうしてでしょう?
相談の内容を見る限り、今の会社について、①と⑤の点について、疑問を感じているようです。②についても、そうなのかも知れませんが、文面からだけではちょっとわかりません。
一つ一つについて、もう一度、自分に質問してみてください。
◆問題を具体化、細分化する
あなたの会社が目指している世界(ミッション)は、あなたが理想とする世界、あなたが人生で達成したいと思っていること(ミッション)とどの程度一致していますか?
もし、一致していない、方向が違うと思う場合、それは、あなたにとって耐ええられないことですか?
あなたは、人生の大半を過ごす場所は、自分らしくいられる場所であってほしい、と言っていますが(もちろん、わたしもそうです)、では、あなたがあなたらしくいれるときというのは?
バリバリ仕事をして、成果を上げて、社内外で注目されることですか?
目立たなくてもいいから、能力と成果に応じた報酬と評価を得ることですか?
和気藹々と同僚と仕事をしていることそのものですか?
チームのメンバーをサポートすることですか?
リーダーシップを振るっていることですか?
周りに影響されずに淡々ときちんと仕事をやり続けていることですか?
お客さまに直接感謝されることですか?
人の輪の中心にいて、みなにちやほやされていることですか?
あなたは、いまの仕事は「全くワクワクしない」とおっしゃっていますが、それでは、あなたがワクワクするのは、どんな仕事ですか?
あなたが、ワクワク仕事をしている様子を思い浮かべてみてください。
どんなオフィスですか?
どんな人がいますか?
あなたはどんな仕事をしていますか?
自分の本当の欲求(理想)が明らかになったところで、もう一度、現状を分析してみます。あなたが自分らしくいられない、と感じるのは、具体的にどんなときですか?
それは、仕事の能力、適性に関することですか?
あるいは、会社の昇進の制度や、伝統から来る社風ですか?
具体的に、どこが嫌なのですか?
それは、まったく変わる可能性のないものなのですか?
あなたは、「一緒に働きたい!こんな人みたいに仕事をしたい!と思える人がいない」と言っていますが、なかでもあなたが嫌だな、と思っているのは、誰と誰と(誰と誰と、、、)誰ですか? その人たちのどんなところが嫌なのですか?
なかでも、あなたが耐えられないのは、誰ですか?
もし、その人がいなくなったら、今の環境は心地よいものに変わりますか?
その人がいなくなる可能性はありませんか?
どうでしょうか? 日頃、漠然とした不安、どんより重い気分が続いている場合、その理由は、案外単純なたった一つの未確定事項だったりします。書いていないレポート、入金されないキャンセル料、急に途絶えた友人のLINEの返事、子どもの受験……。仕事の場合も、会社の雰囲気が嫌だ、と思っていたのだ、よく分析してみると、それはいまの上司が部課に来てからのことなのかもしれません。
◆失敗しても後悔しない決断をする方法
問題の本質が明らかになったら、次は、それに対する対策を立てる、つまり、
①闘うか(出世して、自分の好ましいものへと変える)
②逃げるか(転職する)
③受け入れるか(順応してそこに留まる)
を決める。
そのために、それぞれの行動を起こしたときのメリットデメリット、リスクとリターンなどを、また詳細に見ていくわけで、そのためのビジネス用のフレームワークもたくさんありますが、今回はそれは割愛します。
重要なのは、
たとえ失敗に終わったとしても、
後悔しない決断をすることです。
あのとき、辞めるんじゃなかった、と悔やむのではなく、
あのときは、あれが最善の途だった、
あのときは十分に考え尽くしたうえで自分で決めたことだった、
と思えるように、充分に考え尽くすことです。
充分に考え尽くすとは、
①考え得るすべての選択肢、可能性、リスクを書き出す
②自分自身の本当の欲求に正直になる
ことです。
そのうえでの選択であれば、どんな選択であっても、わたしは、FA子さん、あなたを支持します。
追伸:
この2ヵ月で、世の中は大きく変わってしまいました。私の古巣のディスカヴァーも、コロナ後も、必要に応じて出社すればいい、リモートワークに切り替えると発表しました。そういう会社は、大手にもたくさん出てきました。
つまり、これまで、実は、新卒の会社選びに結構大きな影響力を持っていた「社内の雰囲気」「一緒にはたらく人がいい」「オフィスの場所がいい」といった項目の重要性が低下してきた、ということです。もちろん、オンライン会議はたくさんあるでしょうが、四六時中、相性の悪い人と顔をつきあわせている必要はなくなる。
つまり、仕事そのものの面白さ、社会的価値、自己成長への可能性、成果を正当に評価できる評価システムといったことが、仕事選びにおいて、より重要になってきているし、今後、その傾向はますます高まるだろうということです。
それも含めて、いまの仕事を見直してみると、、、、、どうですか?
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